ぶらっと写真散歩、ポエム読むこと書くこと、遠い空を眺めること、そしてときめき・・大好きなわたし


by makochi09
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流星ワゴン

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この間の台風が来ていた日曜日まったく外にも出れないので図書館で借りてきた
本でも読むかと・・・重松 清さんの"流星ワゴン”を読みました。
今回この人の小説読むのは2作目・・
前回読んだ”ビタミンF”がすごいよかったのでまた借りてみた。
この人が書く家族愛の話が私はすごい好きで・・今回もその手の話。

内容的にはタモリさんがやってる”世にも奇妙な物語”みたいな感じ。
主人公の永田カズオさん38歳は・・妻、美代子、息子、広樹の3人家族
ずっと幸せな家庭生活を送っていた・・これからも続いていくと思っていた。

でも息子が中学受験に失敗しひきこもり、その直後、妻、美代子には突然
”あなたとはもう暮らせない、このまま一緒にいると頭がおかしくなりそう
だから離婚届けに判を押して”といい渡される
会社ではリストラされ、家のものにはまだそのことを話せずじまい
最悪な現実をたたきつけられ・・生きる望みも失う

”もう生きててもしょうがない家にも帰りたくない”

と最終電車を見送ったあと
駅前のベンチに寝転びながらウィスキーを飲んでいたら
奇妙なワイン色のオデッセイが自分の前に止まって

"遅かったね・・待っていたよ・・さぁー早く乗って”

と車に誘われる

その車には橋本義明さんと息子健太くん親子が乗っていた
でもそのふたりは5年前に・・免許を取り立てで始めての家族ドライブに行く途中
スピードを出しすぎて反対斜線に飛び出し
奥さんは一命をとりとめたが・・夫、義明さんと健太くんは即死。
哀れな親子と新聞やワイドショーでもとりあげられたあの親子だった。
成仏できず現世を彷徨い続け・・こうやって死にたいと思ってる人を
ワゴンに乗せては走る・・いわば死神?

その人が・・自分を迎えに来た・・

”あなたさっき死にたいと思ってたでしょ・・・”

とふふと笑いながら・・・・

自分はもう死んでいるのか・・それともまだ生きているのかわからないまま
彼らとドライブをし・・

”あなたにとって大切な場所に今から連れて行ってあげる"

とおろされた場所で自分が見落としていた家庭崩壊の原点ともいえる
そんな場所へ連れて行かれ・・真実を知ることになる
その連れてこられた現場で・・奇妙なことに自分と同じ年齢の父・・忠雄に出会う。
父、現実には忠雄63歳・・実はもう末期がんであと一週間持つかと医者には言われた・・
父と息子カズオとはずっと何年も心が通わない関係が続いていたが
不思議と・・38歳の父とは心を割って友達のようにしゃべれた

幼少時代をふりかえりながら
”あの時はこうだったと・・こんな気持ちだった”
いろんな話ができた

今の自分の抱えている家族の危機を

父が自分の立場だったらどうしただろう・・
こうゆう時はどうゆう行動をとるだろう・・

頭で思い描きながら父のアドバイスをもらいつつ一緒に・・考えていく
その中で昔描いていた、怖いという父のイメージが少しずつ薄まり
親子の溝も埋まっていく

一度は生きることをあきらめようとしたカズオなんだけど・・

父、忠雄が死神の橋本さんに・・
"この子をあの世に連れて行くつもりなんですか?
私の命と引き換えにどうか勘弁してあげてください。
この子はわしの大切な息子なんです
まだこの子にはたくさんやるべきことがあるんです。”

そう必死でお願いする姿に

"現実に戻っても厳しいよ・・サイテー最悪の変わらない現実だよ
それでもやってみる気ある?”

そう健太くんに聞かれ

"それでも帰りたい・・父さん・・俺、がんばってみるよ”

ともう一度生きることを決意し最後
心がはぐれてた父に

”ありがとう”

といってカズオは夢から覚め現実へかえってく・・やっと息子と心が通い合うことができて
安心したのか父もその5日後に安らかな最期を迎える
そんな話でした。


あの世と現世の境をさまよったことがある人はよく不思議な体験を
することがある・・って聞くけど・・この話もそんな感じで
もうすぐ死を迎える父と死を選ぼうとする息子。
親子という関係はたとえなんかの事情で想いが通わなくなったとしても
人の願いや想いは一念三千といって・・はるか三千光年先までも届く
といわれてるほど・・強くて深いもの

この話、全部が夢の中でおきた出来事なのか?
と思いきやワゴンを降りるとき
”ひとつだけプレゼンを置いてあるから・・”と
サイテーサイアクな現実にかえるカズオに
希望の光となるような物を残してくれたところが・・
世にも奇妙な物語風で・・ファンタジーもはいってておもしろかった

もし自分も娘がこれくらいの年齢になったとき
私も同じ年でこっそり娘のそばに登場できたらおもしろいのに・・
そうしたら同年代の友達のようになれるかな・・
そんな不思議があったらいいのに・・そんなことを思わせてくれる
素敵な話でした
by makochi09 | 2007-10-29 08:04 | BOOK