ぶらっと写真散歩、ポエム読むこと書くこと、遠い空を眺めること、そしてときめき・・大好きなわたし


by makochi09
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

アジアンタムブルー

アジアンタムブルー_d0006718_2315565.jpg


別れの後の静かな午後、パイロットフィッシュ、そして今回ネットのお友達の中で
とても密かな話題を呼んでいた大崎善夫さんの”アジアンタムブルー”をたった今
完読いたしました。
読み終わった今もまだ目頭が熱いというか潤んでいる状態です。
なんといったらいいんだろう・・拭い去れない絶望的な悲しみの中に
あってもそれを幸せのカタチに変えることが人間はできるのだなぁ・・ということを
この作品を通して深くまず知ったというのが大きかった。

『愛する人が死を前にしたとき自分はいったい何ができるだろう』

私だったらなにができるだろう・・・・
ただその恐怖から逃れたくて泣いてるだけかもしれない。

でもアジアンタムブルー・・

”憂鬱の中からしか掴めないものがある”

本の中で何度も出てきた言葉。
すごく私が印象に残っていた言葉。

やがてちりちりになって枯れていく身でもその葉っぱに水をやり
蘇ったものだけが・・強く根を張り巡らせていく・・・アジアンタム

死を目の前にした彼女に、自分ができること・・
それはもう一度彼女に生きている喜びを与えること・・
刻一刻とせまる死の闇におびえながらも
死に場所として彼女が選んだニースという街で
最後の最後までごく普通の生活を送る。

死が目前に迫った彼女に

”葉子は僕の中に引越しをする・・・それだけのことだろう・・”

と言い放った彼の言葉に涙が止まらなかった。
この肉体は消滅してもあなたの心の中へ私は引越しするだけなんだ
そんな風に思えたら・・愛する人にそんな風にいってもらえたら
死ぬこともそれほど怖いものじゃないかもしれないっておもえた。

昔・・いつか訪れるであろう死の恐怖におびえたことがあった。
でもこの本を見て思ったことは・・死ぬことが怖いと言うより、
誰かに心から愛されたというその記憶を持って死ねないことの方が
よっぽど淋しくて一番つらいことなのかもしれないって思えた。
だって死ぬときは思い出以外何も持っていけないのだから・・

だから彼女が

”生まれてきて今が一番しあわせ”

そう言いきれる人生を最後・・彼女に与えることができた彼の優しさに胸がいっぱいになった。
短い生涯だとしてもしたいと思うことができて・・心から大切だ・・と想える人に出会えて
想いが通じ合って”愛してるよ”と彼の腕の中で包まれながら死ぬことができたのなら・・
きっと後悔などなにもないんだろうな・・。

残された物はとてもつらいけれど・・でもその悲しみを乗り越えて再生していこうと
最後一歩踏み出すところがとてもよかった。


パイロットフィッシュではまったくこの彼女のことには一切ふれてなかったけど・・
多分・・彼にとって・・彼女のことも昔の忘れえぬ出来事のことも全部
大きな大きな水溜りの中に映る景色のようなものなんだろう・・って思った。
その水溜りに映る景色を今の自分がただぼんやりと眺めているようなそんな感じ。

それでそれでいいのだと思った。
by makochi09 | 2005-10-09 00:19 | BOOK